長野県飯田市で安全なリンゴを作っています
矢 矧 農 園
  や   は ぎ

松村隆平さん


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道長ではキムチを作るためのベースに、リンゴは欠かせない材料です。そのリンゴをお願いしている長野県飯田市の矢矧農園さんのりんご園を見学させていただきました。中央高速道路飯田ICから153号線(三州街道)を4kmほど南へ下ったあたり。松村さんの果樹園はご自宅に隣接していて南向きの斜面に60a、200mほど離れたところに20a。

まず『矢矧農園』の名前の由来について。このあたりでは登記上の地番ができる以前から、それぞれの田畑に固有の名前をつけていて、松村さんの畑2反ほどが『矢矧』であったため。その昔、寺や社が檀家や氏子の不動産を把握するという目的もあったのかもしれません。
 道長ではキムチベースを作るのにけっこうたくさんのリンゴを使います。大きさ形にはこだわりませんが、やはり安全でおいしいものでなければいけない。というわけで、松村さんの林檎園から加工用として等外品を中心にお願いしています。とはいっても、味のほうはしっかりしていて、デザート用としてもじゅうぶんな品質です。
矢矧農園のりんご園は隆平さんで3代目。1929年の世界大恐慌のあおりで、盛んだった長野県の養蚕・製糸が破綻。農家はやむなく桑畑をあきらめ、ぶどう、梨、そしてリンゴの栽培へと転換しました。明確な四季、春から夏にかけての昼夜の寒暖の差が大きいという条件が果樹の栽培に合っていたためです。日中に光合成で得られた糖分が夜間の低温のおかげで植物の活動が抑えられ、余分なエネルギーを発散せずにすむため果実に甘味が蓄積される。

矢矧農園では18種のリンゴ、梨、桃、スモモと多品種を少量ずつ栽培しています。80a(8反)といえばさほど大きな規模の果樹園とはいえません。松村さん一人でこなすには手ごろな規模といえますが、花摘み、葉摘み、収穫には多くの高齢者(60〜70才代)の助けを借りています。

矢矧農園の多品種生産
果樹にはそれぞれ収穫期があります。また同じリンゴでも品種によって熟す時期にちがいがあるため、多品種を手掛けることで出荷時期を少しずつずらすことができます。こうしてみるとリンゴは品種改良がさかんということもあり、甘さ、風味、酸味、食感、色彩などの組み合わせでバリエーションが豊富で実に多様です。それほどにリンゴは果物の王様ということができます。

リンゴと接木(つぎき)
そもそも人間の背丈にあわせた低木の果樹があるわけではありません。また苗木から成木になり、短期で収穫できるようになるような都合のよい品種があるわけでもない。

接木をする理由
リンゴの場合苗木を増やすにも、品種改良をするにも接木をします。接木の台木には一般に同じバラ科の『カイドウ』が使われます。接木をする理由としては次の点が挙げられます。
挿木(さしき)で増やせる台木にリンゴを接木することで容易に苗木を増やせる。
台木に使うカイドウは低木で成長が早いため、短い年月でリンゴを収穫可能にすることができる。
リンゴは果樹の中でも収穫できるようになるまでには長い年月がかかるといわれます。たとえで『桃栗3年、柿8年』といわれます。さらにその先があるそうで『梅はすいすい13年、ユズは大バカ18年、りんごニコニコ25年、女房の不作は60年、亭主の不作はこれまた一生』だそうです。

とにかく、リンゴの苗木を植えてそれが育って利益を結ぶだけの実をつけるようになってくれるまでには相当な年月が必要です。それを接木という方法で早めてしまおうという考えは非常に合理的といえますが、反面、木の寿命もまた短くしてしまうことにもなり、果樹にとってはうれしいこととはいえないのかもしれません。

松村さんに一年を通してどの作業がいちばん好きですか。という質問をしてみました。即座に答えが返ってきました。「冬に果樹の選定をしているとき」という答え。どうしてかたずねてみると。お客様を気にせず、マイペースでひとりで果樹の世話をしていられるから。だそうです。うーん、納得。それほどに木を扱う仕事がお好きなのだなと実感しました。収穫による恵みは、そんな松村さんの心に対する木々からのお返しなのかもしれません。

松村さん、これからもおいしいリンゴをお願いします。リンゴの木の下で頂いた各種のリンゴと五平餅とリンゴジュース、最高でした。どうもありがとう。

矮性台木(わいせいだいぎ)
リンゴの木をさらに管理しやすい大きさで栽培したいという願いから、カイドウよりもっとコンパクトな樹勢の台木が求められました。それが英国の農業試験場で品種改良された台木用のリンゴです。これを『矮性台木』といいます。M系という台木が主流だそうですが、これでは挿木をしても発根しないためカイドウに接木をして、活着してからさらに目的の品種のリンゴを接木します。おかげでリンゴの大木というか、太い幹のものはほとんど見られません。

松村さんからの手紙:
今日は久しぶりに優良農園のシナノスィートの視察に参加し、ついでに矮性台木について勉強してきました。

たしかにカイドウとM9(英国の農試開発の低木品種)を交配して育種された挿木繁殖性の優れた矮性台木が開発されたことは間違いないようです。JM系矮性台木と呼ばれているそうです。しかし、これは野ネズミに枝を食い荒らされてしまって、ほとんど経済性はゼロに近く、まったく普及していないそうです。

結局従来どおり、マルバカイドウ+M9+リンゴ品種で苗木をつくるか、M9を大株にして土寄せし、自根が出たところでM9+リンゴで苗をつくるしかないようです。

苗木がまったく不足で、超密植並木植えが日本ではなかなか普及しないようです。  (07/09/21)

連絡先
矢矧(やはぎ)農園 松村隆平
〒395−0244
長野県飯田市山本3−170
TEL/FAX:0265-25-2416
http://yahagi.deci.jp/

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