ホンコイ村の塩田地帯の周囲には工業施設がなく、海の水は非常にきれいです。家庭排水も直接入らないよう規制されています

この地域の沿岸一帯が塩田
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道長で使っている『カンホアの塩』は、ベトナムにあるカンホア省ニンホア町ホンコイ村というところで作られている、人工的な加熱が一切されていない天日塩です。

道長では2008年、カンホアの塩に換えました。

道長で知りうる限り、海外にある塩田の中でここほど、日本に近い関係づくりのできている塩田はないと思います。

そして、品質についても申し分ありません。

カンホアの塩見学
道長では2015年7月、念願のカンホアの塩の塩田見学をしました。

カンホア(Khanh Hoa)とは、ベトナムのホーチミン市から東方約350kmの沿岸にある『省』の名前です。カンホアの塩の塩田はカンホア省の省都ニャチャン(Nha Trang)市の北、ニンホア(Nihn Hoa)町ホンコイ村の入り江にあります。ニンホアの浜辺(Doc Let beach:ヨックレットビーチ)は波静かで風光明媚なリゾート。もちろん水は非常にきれいです。

ベトナム戦争後、1976年南北ベトナムが社会主義国家として統一されました。その後、1986年以降、資本主義を取り入れた(ドイモイ)政策がとられるようになり、それまで国営とされてきた製塩事業も民営化へと移行しました。

そのような状況の中『カンホアの塩』をはじめることになる下条剛史氏が1998年、この地を訪れました。ホンコイ村の美しさに魅了された下条氏は、ここに現地のスタッフと自らでタイル張りの結晶池を設計しました。

美しい海
結晶池へはポンプアップにより、フィルターを通す
カンホアの塩ができるまで
左の航空写真は、ホンコイ村にあるカンホアの塩の塩田です(画像クリックで拡大)。その中の最後の番号Nが、カンホアの塩の最終結晶池と作業所です。この地方では天日塩田という方式で塩が作られます。この方法では、海水は干満の差を利用して取り込まれ、高低差を利用した13〜14枚の深さ約10cmほどの池を通過します。その間に、池は次第に狭くなり、最初3.4%ほどの塩度だった海水は濃縮され、結晶池に移されます。

カンホアの塩はここがちがう
一般では25%まで濃縮しますが・・
カンホアの塩では、15%に濃縮して結晶池に移しますが、通常の塩田ではカルシウム分(淡いエグ味)を除くため25%に濃縮させます(カルシウム分は15〜25%の間で結晶する)。

結晶池がタイル張り
カンホアの塩では、結晶池がベトナムでは他に例を見ないタイル張りとなっていて、収穫する塩に、砂粒やごみなどの夾雑物(きょうざつぶつ)が混ざりにくくなっています(さらに結晶池は盛土をして、周りの塩田より高い位置に設定している)。

高床での『枯らし』で、余分なニガリを落とす
結晶池から採られた塩には、ニガリ成分(塩化マグネシウム)などが多く含まれています。一般的な製塩では、ニガリ成分や夾雑物を取るため、飽和食塩水による洗浄を行います(ニガリが含まれていると、水分を吸って塩が固まりやすくなり作業効率が落ちる)。さらに、飽和食塩水で加熱洗浄を行い、ニガリ成分をさらに落とします(この工程で塩の結晶が小さくなる)。

収穫した塩は高床に置き、余分なニガリを落とします
一方、カンホアの塩では、結晶池でできた塩を高床の場所にしばらく置き、ニガリを適度に落とすことで、ちょうどよい苦味を残すようにしています(他の塩田では高床の場所を作らず積み上げていくため、山の下の方は味が変わってしまうそうです)。

このあと、干し台に乗せて天日乾燥します。

石臼で挽く
カンホアの塩では、あえて手間のかかる石臼での粉砕をすることで、天日塩本来のおいしさと品質を得ています。

「すべては味のために!!」です。

石臼挽きは、今ではほとんど行われません
さらに手間のかかる作業が・・・
手ばかりかかっていますが、さらにこの後に塩に混ざった夾雑物を除去しなければなりません。

先にも書きましたが、他の一般的な製塩では夾雑物を除去するために、できた塩を飽和食塩水で洗うという工程を行います。カンホアの塩では塩の味を大切にするため、この作業はしません。
そこでどうするかというと・・・「目で見て、手で取る!」です。言ってしまえば当たり前に思える作業です。

ちょっと想像してみてください。真っ白な塩の中に、時々ある黒い点を、ひとつひとつスプーンで取っていくんです! 日本人は真面目だ、実直だと言いますが、彼女たちには敵わない! たぶんぼくが一日やったらおかしくなってしまいます。

ぼくが見せていただいたときには、本格的に稼働している状態ではなかったため、4人のパートさんが特別に作業してくれていましたが、多い時には30人近い人たちが働くそうです。

考えられないほど大変な作業ですが、塩は真っ白でゴミが目立ってしまうので、神経質にやらなければ、やっぱりクレームになってしまうのですね。本当に頭が下がります。
作業場を見せていただいて一番、印象的だったのは作業しているスタッフの顔です。すごくいい顔してますよね。みんな仲良く楽しそうに仕事をしていました。

ホンコイ村は田舎なので、農家の現金収入のためにも、カンホアの塩は重要な役割があるのだと思います。人の手がかかるってことは、お金がかかることでもありますが、仕事が生まれるってことでもあります。

大切に塩を使わねば! あらためて実感します。
(真ん中右の黄色のシャツがぼく、右の黒い服がぼくの奥方です。写真左の男性:アンさん、右の男性:フーンさん)
タイル張りの結晶池、とてもきれいに作ってありました。他の池より高く設置されていて、畦(あぜ)の部分もすべてタイル張りです。
「雨が降ったら捨てる」とごく当たり前の答えが衝撃でした。
味にこだわっているのが理由ですが、それほどに乾季には雨が降らないということですね。
あらためて、カンホアの塩のすばらしさを実感させられた、2015年の『カンホアの塩見学』でした。
企画開発・輸入販売元
有限会社 カンホアの塩
東京都福生市武蔵野台1-19-7
tel. 042-553-7655

食について
 カンホアの塩