CPA職務展望 CPAの昔のお仕事

IPO〜新規公開〜

 以前、私はIPO = initial public offering (株式の新規上場・公開)に携わっていました。
 IPOはいくつかのステージに分かれますが、我々が行うのは主に次のような仕事です。

上場・公開前

上場・公開認可後〜公開まで

 株式公開とは、単的に言えば「会社に値段がつくようにしてあげる仕事」です。公開会社の株式は毎日マーケットで取引され誰でも自由に売買でき、値段がついてそれが表に出るのが、未公開会社との一番の違いです。
 毎日値段がつくということは、もはやその株式はお金と同じです。公開企業はいわば自由にお金を刷っていいよと許可をされているのです。ですから、収益性、ディスクローズ、内部統制、その他厳しい審査基準をクリアした企業のみがその権利を持っているのだと思っています。私の仕事の一つは企業が株式公開をするにふさわしい体制となるようにしてやることです。
 ただし、収益性の有無(ビジネスモデルの妥当性)は問いますが(収益を上げられない企業の存在価値、少なくともキャピタル・マーケットでの存在価値はない)、収益が上がらない会社に対する治癒などは行いません。それは経営コンサルティングであって、それをやるのはコンサルティング・ファームです。

 99年秋東証にMothersが開設されたのに続き、2000年初夏にはNasdaq Japanも稼動しました(2003年にNasdaqの日本撤退に伴い、ヘラクレスとなった)。店頭市場(JASDAQ)もベンチャービジネス向けの公開基準を設けました。公開に関する諸規制が緩和され、従来、起業からIPO迄何年もかかっていたのが、設立一年未満で公開する企業も出ています。(ただし、形式基準が緩和されたからと言って審査の実質面が緩和されたということではありません)

 同時多発テロ、SARS、BSE、イラク戦争と断続的に発生した様々な外的な突発要因がきっかけとなり、企業の業績実態を半ば度外視したマーケットの冷え込みが続き、IPOも一時期は低迷しました。ネット関連企業を中心としたマーケットの活況が「ITバブル」とだけ見られがちであることも事実ですし、新興市場に上場したベンチャーの中には上場するに足らない企業も一部にあったのもまた事実ですが、然しながらITバブルをきっかけに上場したベンチャーの多くが、日本経済全体に対してプラスのムーヴメントを生み出したと私は思います。MothersやNasdaq Japan創設は負の側面も持つ一方で評価されるべきだと考えます。

IPOへの道

 IPOは、資本市場へのデビューであって、従いメインの部分は、当然公開後までを見据えた視点からのオファリングの成否、ディールがうまくいくかどうか、です。公開コンサルティングなどという部分は、企業がマーケットを利用する資格があるかどうかの公開審査をクリアするために行うだけであり、サブ的な位置付けに過ぎません。個人的には社内体制整備などは専門コンサルか監査法人がやればいいと思っていますし、他人の力を借りなければ公開のための体制整備を行えないような企業がそもそもマーケットに出るべきではないと言えます。経営者のコーポレートガバナンスに対する意識やマーケットについての理解が浅すぎることと、全般的にベンチャー企業は管理部門の人員が質量とも充たされていないのが現状です。

 企業のブランド認知度(知名度)を飛躍的に向上させ、あわせて財務基盤を確立する手段として(信用力の向上による間接金融での資金調達へのプラス影響も見逃せない)、IPOは有力な手法です。
 投資銀行業務として考えた場合、未公開時の資金調達からはじまり、公開後も一貫した企業価値創造、向上のためのアプローチを行える体制を持っていることが求められており、IPOだけで終わりにはなりません(発行体から見ればIPOは会社の一生で一度しかないのですが)。もっともそれだけのサービスを提供する(要求する)顧客は限られます。

IPO補足メモ

 CPA試験対策の中で学習する内容は私の職務にはあまり関係ありません。私がCPAに合格しているということは周囲は意識していません。上司や同僚にMBAや税理士、あるいはコンサル出身者もいますが、重宝なのはやはり公認会計士で会計士補も含め何人もいます。商法や証券取引法を知らないと仕事にならないためです。(だったら弁護士でもいいのではないかという話になるが、会計経理全般について知っていることはそれ以前の前提なのでやはり公認会計士)
 もちろん、財務諸表が読めるなど会計に関する基本的な知識は役に立つとか以前の問題です。

 面白そうな仕事だと思いましたし、経理や会計専門職にはあまり興味がなかった(FAREが一番点数が低いのはナイショ)ので金融を選びましたが、ただ当部門で活躍している人は監査法人出身の公認会計士も多く、やはり監査法人というのは(経験を積むにあたって)魅力的な職場の一つであることには違いないと思います。

 先日あるクライアントの方とお会いしたときに、「現在日本企業でニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場している会社の数は少なすぎる。日本のエクセレントカンパニーしか上場できないとしても、もっとあってもおかしくない」という話になりました。
 マーケットは資本主義のインフラであり、もし東京よりニューヨークのほうが魅力的なマーケットであれば、そちらを使おうとするのは自然な発想です。マーケットとして魅力的な代わりに、利用するためのハードルが高いのだとすれば、そのハードルを超えるべく、経営を強化するであろうし、結果NYSE上場を果たし、新たなインフラを手に入れた企業はより強くなり、他を凌駕していくのではないだろうか、と話されていました。
 「そこにCPAが入ってくるのではないか」、というのです。上場準備の過程において、あるいは上場後、CPAは必需品になってくるのではないかという示唆です。
 先日、監査法人からNYSE上場を目指しているとある大企業へ転職されたCPAの方を実際に知っていますので、あながち誇張とも思いません。

NYSE・NASDAQ上場基準

 CPA Examは基本的な知識を広く出題するという性質を強く帯びているため、実際は勉強内容が職務に直結しているという方は相当な少数派だと思います。

 知識面の問題以外に今自分の課題として強く感じているのは言語能力です。常に論理的に破綻なく正確に書き、話すことの難しさを感じています。日本語でさえそうなのですから、英語となるともう。

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