2020/09/23
No.622

しらびそ高原の悲劇

絶景を誇る、日本のチロルと呼ばれる『下栗の里』のある長野県飯田市しらびそ高原。中部地方の坂バカ(自転車で山岳地帯を走るのが好きな人)が、いちどは訪れてみたいところ。

5月のある日、期待に胸膨らませ、ぼくら4人のチャリ友と各自の愛車を載せたライトバンは一路、現地に向かったのだった。そこで見舞われる災禍を知る由もなく・・。

ライトバンはあらかじめ許可をいただいた駐車場に止め、上村地区の国道152号上村橋付近からまずは下栗の里へ。ここまでは平均勾配7.6%と若干きつめの登りなのだけれど、最後の850mはつづら織の激坂になっていて、平均勾配12%と過酷。
これでもかで到着した下栗の里(標高960m)からの眺めはまさに絶景。と、まあこの辺りまでは順調に駒がすすんだかのように見えた。

が、そこからすこし登って昼食スポット『ロッジ下栗』のはずがなんとコロナの影響で全館閉店。空腹とともに先行き不安がよぎる・・。

その先は南アルプスエコーライン(名前だけはカッコイイ林道)を御池山噴石クレーターを過ぎ、南アルプスが一望できる(はずの)しらびそ高原天の川(標高1918m)までの14.8kmの上り坂で平均勾配6.8%の山腹伝いの若干ゆるめの坂。本来なら、その行程で絶景を楽しめる予定ではあったのだけれど。

だがしかし、御池山のクレーター付近に差し掛かったころ、天気はにわかに怪しくなってきた。雷雲があたりを被い、とうとう雨が降り出す。雨具を車においてきてしまった。寒い。ここはなんとかしらびそ高原のロッジ天の川までがんばろう。で、到着のころには雨は本降りとなっていた。

ここでとうとう止めの一撃。なんとここ天の川も完全閉館中。あったか〜い飲み物を提供してくれるはずの自販機すら停止。凍えるからだを軒下で雨宿りするも、この先、急な下り坂を自転車で22km以上走るのは大きな危険がともなう。この場から動けない。気温は12℃を下回り、正直、身の危険を感じてしまうのだった。

そうこうしているうち、愛知県からの日帰りドライブの夫婦連れの車到来。頭を平にお願いし、無理を言い、ぼくだけ下の駐車場まで送っていただき、そこから3人の残る『天の川』へライトバンで急行したのだった。「無事に帰れてよかった」とつくづく安堵のぼくたちだった。地獄に仏。愛知県のご夫婦「ありがとうございました」。

まったく、山の天気はあなどれない。今回の経験がぼくらに授けた教訓は、かなり強烈に身にしみたのだった。

コロナ禍のおかげで、世の中がおかしい。そんなことわかって行楽しなければいけないはずではあったのに、しらびそ高原から「来るな!」と拒まれた挙句、お仕置きまで。

歴史にのこるペストやコレラによる災禍を思えば、危険性を極力避ける意味での移動自粛、受入拒否は仕方ないのかもしれない。まったく、情けなくも悲しささえ感じてしまった日帰りサイクリングなのだった。
このときは上天気だったのに・・・