2022/6/20
No.627

映画『シェイン』
『シェイン(shein)』原題『crock of gold(壺いっぱいの金)』という映画を観た。2時間ちょっとの長い映画。

シェイン(Shein MacGowan)というのは、アイルランドのパンクロックバンド『The Pogues』を率いてきたミュージシャンで、生粋のアイリッシュ。6歳から酒浸り、人前でアイルランド音楽を歌わされ、青少年期にはシンナー、覚せい剤も。映画の中でのインタビューの間中、酒を離さないという徹底ぶり。だれが見ても救いようのない人。

大英帝国との関係を、これでもかというほどドキュメントするほどに、アイルランドがいかに搾取され、虐げられてきた民族なのかが表現されている。アイリッシュはその圧力に対して、徹底的に抗戦してきたという歴史についても。

ゲルマン人の台頭でヨーロッパ各地に追われ、ケルト人(の末裔?)は、西の果てのブリテン諸島にもたどり着く。とりわけ、アイリッシュはケルトの好戦的な気質を受け継いできたのかもしれない。イギリスによる搾取に耐えかね、さらに西のアメリカ大陸に移民するも、その船旅の途中で、半数の彼らが命を失ったと言われる。

あれほど迫害と侵略を受けながら、大英帝国から独立(南アイルランド)しているだけあって、大した、誇り高き民族といえる。

そういった国民性を、アイリッシュ音楽を基にパンキーなロックとして表現し、活動してきたのが pogues ということ。

シェインを肯定できるわけでもないけれど、幼少から酒を与えられ、飲んだくれ、反抗的ロッカーとして存続してきた彼の精神はさすがかもしれない。
彼は今もアルコール漬けで、身体もガタガタの車いす生活。ミュージシャンの生活からも遠ざかってしまい、年齢は64歳。この先、長い寿命とも思いにくい。

だからといって「だめじゃん」とも言い切れない。事実、本人が「後悔していない」というのだから。

芸術性とかストーリー性をこの映画に問う必要もないのかもしれない。一人の人物のドキュメンタリーとして解釈すれば、ちゃんと意味もあるのだとおもう。

決して、ひとりのアイリッシュの生き様を弁護しているのでもなく、ただ、ドキュメントとしてはちゃんと成立してると思う(でも、どうしてもシェインを憎めない)。たとえ、通常と違ったコースを選んでしまったとしても、振り返らず、後悔せず、進んでいけたらそれもいいと思う。

人は人、自分は自分、人がそれを評価するもんじゃなく、自分で納得できる一生は、この映画の原題でもある『つぼいっぱいの黄金』なのではないかしら。

ぼくの人生、大したものでもないけれど、自分で納得できるような人生を歩めたらいいと思う。というような映画『シェイン』でした。冷静に、この映画はこれでいいんじゃないかなというぼくの感想。