天野グループ
 三河湾に流れ込む矢作川と東海道新幹線が交わるあたりの西岸、ゆたかな川の恵みを受けた肥沃な土地が広がっている。桜井町大帳(おおちょう)というところ。このあたり、その9割以上が『天野』の姓を名乗っている。20年ほど前、はじめてたずねていったとき、目当ての天野を探すのに一苦労してしまったもの。

 現在、天野グループは3人のメンバーで運営されていて、グループ結成25年以上にもなるベテラン。リーダー役の道子さんと、たき子さん、ナエ子さん。作っている野菜のレパートリーは、ほうれん草、小松菜、大根、人参、レタス、キャベツ、楽京など(特に菜物に重点を置いている)。そのための畑の面積は合計で約9反(0.9ha)。水田は1.6haほどだそうだが、道子さんとナエ子さんのところでは米作りは委託をしている(畑作は手間がかかるのです)。

 道長でお願いしているのは、大根、楽京、人参といったところで、種類は少ないものの量的にはけっこう多い。道長を現在の音羽町に移転する以前は、白菜、かぶ、野沢菜、干し大根、大しょうがなど、いろいろ無理を言ってお願いしていた(移転後は、地元の鈴木慶市さんがメインに)。

ナエ子さん(左)と道子さん
 三人の天野さん、さすがに最近少し年めいてたい肥作りなどからは遠のいたものの、土作りにはとくにこだわりを持っている。葉物メインということで、真夏7月中旬から8月末までは畑を休ませる。その間、豚ぷん、有機肥料、微生物資材、ボカシなどでじゅうぶんな土作りをしている。

道長も、これは実感しているけれども、農業は一にも二にも土作りしかありません。人間にとってその生活環境が、物理的、精神的に非常に大切であるのと同じで、農作物にとっても『土』はとっても大切なもの。特に植物はいったんその場に『生』を受けたら、そこでしか一生を送ることができない。その『土』がすべてということになる。『医食同源』という言葉があるけれども、人間も植物も全く同じで、野菜がその中から直接成長の糧(かて)となるものを取り込む以上、『土』は健康でバランスの取れたものでなくてはいけない。三要素だけでなく、微量要素(ミネラル)をバランスよく含んだ、生命力に富んだ『土』があって、さらに太陽と空気と水を得て、作物というのはストレスのない健康なものに育つわけです。

道子さんのご主人