永田さん夫妻

カクトウ醸造


愛知県武豊町の豆みそ、たまりのメーカー


 道長で使っているみそ・しょうゆといえば、大豆と塩だけで造った『尾張の味』。その蔵元、カクトウ醸造さんとは、1995年以来のお付き合いをさせていただいています。道長でカクトウさんの商品を使わせていただいているのには、やはりその品質のよさによるところが大きい。味と香りがよく、少量でも伸びが良いというのがその理由。仕込みはすべて杉樽で20から50石のものが50個ほど。合成樹脂や金属のタンクは一切使用せずという徹底ぶり。(1石:10斗・約180リットル)
 道長でも冬になると自家製のみそを仕込んでいるので、そういうことはよく知っているつもりでしたが、いざみそ蔵に案内され、説明をしていただいているうちに、こんなにもみそ、たまりについて知らなかったのかと我ながらおどろいてしまいました。


みその仕込まれた杉樽


仕込んだみそには三段の重石が乗せられます。しみ出すたまりがみそをおおうため、みそが空気にふれるのを防ぎます
みそとたまりの造りかたのちがい
 もちろんみそ、たまり、いずれも原材料は大豆と塩でまったく同じです。でももうひとつ大切なものがあります。それは『水』。

 カクトウさんでは、みそを仕込む場合には『二分半』と決まっているそうです。二分半とは25%ということで、これはみそを仕込むときの麹の量に対する塩水の量の割合。塩水の濃さは約23度(ボーメ・比重)。

製造工程(豆みそ)
 まず@大豆を水に浸す。A大型の圧力釜で蒸す。Bみそ玉を作る。Cみそ玉に麹菌をつけ、むろでみそ麹を作る。D定量の塩水といっしょに樽に仕込む。E二年間醗酵熟成させる。Fたるより取り出し、みそを濾してなめらかにする。G袋詰めして出荷。

 それに対してたまりの場合には五分仕込、八分仕込、十水(とみず)仕込と塩水の量は多くなります。ただし多くすればするほど生産量は増えますが、濃度の薄いたまりができるわけです。また毎回製品として出荷するたまりの品質のばらつきをなくすため、濃さのちがうたまりを造っておきブレンドします。

 見学させていただいてつくづく思うことは、たまりの製造にかかわる技の複雑さです。微妙な仕込みのちがい。せっかく仕込んだ旨みを取り出すための気の遠くなるような作業。『待ち樽』と呼ばれるタルでの貯熟。職人技がたよりのブレンド。

 これら一連の工程は、単にたまりをつくるというのでなく、カクトウのたまりをつくるのだという『心意気』を感じさせてくれます。
製造工程(たまり醤油)
 豆みその製造工程とEまでは同じ。Fたるの底の栓を開けてたまりを注ぎ出す。Gさらに圧搾機でたまりをしぼる。Hいったん『待ち樽』へ溜めて1〜2ヶ月なじませる(貯熟)。Iろ過器(珪藻土)でにごりを取り。J製品。

 製造工程は実に巧妙な作業が組み合わされています。

 みそづくりはたまりとくらべて単純な工程のようにみえますが、それだけに手直しのきかないむつかしさがあるのかもしれません。みそについてはちがう機会に掘り下げて考えてみたいと思います。

製麹(せいぎく)について
 みそを仕込む前にみそ玉に麹菌を付けて、みそは3日、たまりは4日かけて麹にします。その作業を『製麹(せいぎく)』というのだそうです。麹という字が花の『菊』と部分的に似ているのと、蒸した大豆に麹かびの花を咲かせるという意味も含めてこう呼ぶのでしょう。蔵主のみそ造りへの思い入れを感じさせます。

 カクトウさんではこの製麹の作業は自社では行なっていません。以前は小型の設備をもっていましたが、現在ではすぐ近くの同業の蔵元(伊藤商店)に製麹を委託しています。毎回の作業で機械は洗浄されるため、カクトウさんの原料大豆に他の大豆が混入することはありません。

カクトウ醸造さんのみそ、たまり
 カクトウさんでは、製品として出荷する際、加熱やアルコールの添加はしていません。ですから道長では必ず冷蔵庫で保管しています。みそ、たまりにとって、高温と強い光は風味を落とす大敵です。

 肝心なことを書き忘れていましたが、ここ武豊町は海に面した港町。そのむかし、原料の穀物や、みそ、しょうゆを運搬するのに海路は重要な手段だった。それと矢作川などの大きな川のおかげで、豊富で質の良い伏流水が使えたのも、この地方で多くの醸造の蔵元が栄えた理由といえましょう。またそのむかしには、ここから東の方向の吉良町では製塩業もさかんだったのです。それを物語るかのように、カクトウさんの蔵と目と鼻の先には、ほかに4軒の蔵元があり、いずれもみそ、たまりをつくっているのです。そして武豊町と衣浦湾を隔てた碧南市には、道長にとっても重要な蔵元『角谷文次郎商店』さんと『日東醸造』さんもあり、まさにこの地域は醸造のまちというにふさわしい。
 カクトウ醸造さん。まさに地元に根ざした、大豆と塩だけで造ったみそ、たまりのメーカー。色から来るイメージほどの辛さはなく、むしろ旨みに徹した醸熟のきわみともいえる風味は、やはり尾張三河の独壇場といえるのではないでしょうか。(豆みその塩分は11%、たまりは16から17%です)



お問い合わせ:
カクトウ醸造
〒470−2544
愛知県知多郡武豊町字里中133
TEL:0569−72−0341