CPA職務展望 就職のススメ

 もしかすると?と感じられる方もいらっしゃるのかもしれませんが、実際に「フリーター」というステータスが今の日本に存在し、昨今の経済沈滞のため不本意ながらも職を失った(あるいは得られなかった)方々や、自発的に離職してCPA試験合格を目指す方々も実際にいらっしゃる以上、採り上げるべきだと思います。そしてそれについて書くことができるのは、実際に大学卒業後、定職に就かなかったワタシなのです。

働かない選択

 # -)'s! ||| CPA |||はCPA試験について扱っていますので、ここでは、定職を持たない状態でCPA合格を目指す方、を念頭に考えを述べることにします。ここで述べる内容は、# -)'s! ||| CPA |||の他のコンテンツと同じく、私自身が知っていること、経験したこと、考えていることに基づいて記述されています。

 結論から述べますと、「働いたほうがいい」です。

働かないリスク

 キャリアにブランクを作ってまでCPA合格に投資することは、多くの場合ハイリスク・ミドルリターンくらいに位置付けられると思います。場合によってはミドルリターンでなくローリターンになってしまうやも知れません。ノーリターンとは思いませんが。
 言うまでもありませんが、手持ちのキャリアやスキル、もしくは慎重に配慮された計画と組み合わせることで、CPAが確実性の高い投資になる場合も当然あります。しかしCPA取得のためにキャリアにブランクを作るよりも、現職で実務経験を積まれるほうが、かえってキャリアの幅を広げる可能性があるかもしれません。

 大学卒業後、職務経験無しにCPAに合格したところで、それで仕事はできません。仕事をするためのスキルは仕事からしか身につきません。特に経理実務はある種職人的な技術を求められるため、他の職種よりも経験が占めるウェートは高いです。専門書を読んでも試験に合格っても得られない種類のものです。未経験で経理への転職は、CPAがあったところで25歳くらいでないと厳しい(不可能とは言いません)でしょう。もちろん正社員でなければハードルは下がります。(が、リターンも下がります)
 もちろん、経理に限らず、仕事をしなければ身につかないスキルはたくさんあります。特に大学卒業後、定職に就かないことを予定されておられる方は強く覚悟してください。資格や専門知識それ自体は実務(仕事を進める力)とはまったく異なります。年齢が経過しているのにそれにふさわしい実務経験がない、という状態は、長くなればなるほど脱出が困難になります。また、未経験でも採用対象となるポジションは、往々にして何らかの要素が魅力的ではないのか、あるいはそうでないのならば、経験者と比して面接ではより厳しく資質が問われることになるはずです。

何回転職できる?

 一つの仕事について、それが身についてキャリアになったとみなされるのは、最低3年、あるいは5年程度だと思われます。スキルのみならず履歴書的な実務経験何年、というのは人材市場において重要な評価ファクターです。一方で、一般的に「転職可能限界年齢は35歳説」というものがあります。この説に従えば、職業人歴をスタートさせるのが遅れた場合、あるいは途中にブランクが入ってしまった場合、限界年齢に達するまでに転職できる回数がそれだけ減ってしまうことを意味します。年齢に応じたキャリア(マネジメント経験)を得られる機会も少なくなります。これは大きなキャリア上のリスクです。
 CPAはキャリアの方向転換、キャリアアップのクッションにはなり得ると思います。何もしないよりは何かするほうがそりゃいいに決まってる。ただ、転職の場合は前職までのキャリアのほうがより重要です。

転職は必要?

 会社を替わることイコールキャリアアップではありません。転職などせずに済ませられるのならそのほうがいい。ただ、現実には自分の目指すキャリアのためには転職せざるを得ない、あるいは積極的に転職すべき場合も当然あります。

 たとえば、例としてプライベート・エクイティ・ファンドのマネジャーを考えてみます。PEに必要(望ましい)と思われる知識、経験は、ファイナンス(イグジットのM&AとIPO含む)、経営(戦略コンサルティング経験もしくはMBAの知識)、たとえば技術方面が分かるとプラスになります。ちょこっと挙げてみた要件ですが、これらを一人で兼ね備えるのは簡単ではありません。仮に複数を経験するだけでも容易くはないでしょう。実務経験年数が短いと、必要な業務経験を体得する期間も短くなります。

 注:プライベート・エクイティとは未公開企業を対象とした投資手法の総称。ベンチャー・キャピタル(VC)とバイアウトの二つに大別される。プライベート(未公開)はパブリック(公開)に相対する概念で、個人富裕層対象に資産管理・運用を行ういわゆるプライベート・バンキングとはまったく意味合いが異なります。

会社を辞める?

 そうは言っても、CPA合格の果実を確実に得たいがゆえに、あえて職から離れるという選択肢を採る場合もあり得ます。仕事が忙しく勉強に十分な時間を割けない、お気持ちはわかります。拘束時間が減る(が、給料は下がらない)、あるいは受験前に休暇を取れる会社に転職する、というのは可能であれば十分にリーズナブルであると思います。

 CPAに合格することで劇的に転職しやすくなるとは言い切れません。人材市場において競争力の源となるのは積み重ねてきたキャリアであり、CPAは懐刀的な位置付けでいいと思います。懐刀は必ずしも抜かなくてもいいわけですし、持っていなければならないものでもありません。抜き方さえ知っておればそれでよいのです。
 言うまでもありませんが、退職後に仕事が見つかるかどうかの心配は、在職中に行うべきものです、念のため。

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