前川洋八さんと奥様の友子さん

前 川 漬 物 株式会社
 まえ  かわ  つけもの 


道長念願の甘口のたくあん漬を作っていただきました
 
前川洋八さん

 長年お世話になった前川吉之助さんは、2014年10月、お亡くなりになりました。残念で仕方ありません。謹んでご冥福をお祈りします。そして、永い間、ありがとうございました。

 2003年、はじめて前川さんをお訪ねし、渥美の伝統漬物『一丁漬』の製造をお願いしました。そのとき、吉之助さんはその場で快諾くださいました。本当にうれしかったです。以来、添加物の使用はもちろん、大根の栽培も無農薬で行っていただけました。まったく、感謝の念に耐えません。

 吉之助さん亡き後ですが、弟さんの前川洋八さんが継いでくださることになり、ここにご紹介させていただきます。洋八さんは今までも、大根の栽培、一丁漬などの漬け込みを、吉之助さんと共にして来られ、技術的な面でも信頼させていただいています。

 渥美半島の伝統漬物『古式一丁漬』を守り伝えるべく精進してまいります。これからも、よろしくお願いします。


『古式一丁漬』
 昭和20年の終戦からまもなく創業。30年ころから、本格的に『一丁漬』の製造を開始。その漬け方は単純明快で、米ぬか、塩、に天日干しした柿の皮とナスの葉を加えるというだけで、その方法が、今もそのまま受け継がれています。

 渥美半島を国道259号線で伊良湖岬へ向かい、田原市江比間(えひま)町(旧渥美郡江比間町)という集落が前川漬物さんの会社のあるところ。道長の生産者になっていただいている『渥美どろんこ村』とは目と鼻の先。

 前川家は渥美半島江比間では代々の農家ですが、戦前の先々代ではみそ・醤油を造ってみえたそうです。産業としての渥美たくあんの歴史は昭和25年ごろから始まる。前川漬物の歴史もそれにともなう老舗。それ以前には海伝いの船での往来が頼りであったのに対し、自動車での運搬が可能になったことも、重量のあるたくあんの商業化をすすめた大きな要因といえる。

 当時の渥美たくあんといえば、塩度は15%近く、それにウコンの香りと、ズルチンやチクロといった人口甘味料で強力な味付けをし、さらにオーラミンなどの黄色の着色料で見栄えをよくして購買力を促すというものでした。とくに甘味料の効果は、高い塩度の塩辛さをも押さえ込んでしまうほど強烈であったわけです(現在、以上の食品添加物はいずれも使用禁止となっています)。

当時のたくあんの作り方は:
 それまではたくあん漬といえば、ぬか漬の塩辛い漬物でしたが、昭和40年前後には液体を密封できるプラスティックが開発され、漬物の移送が手軽にできるようになった。さらに密封袋への真空包装、加熱殺菌が可能になり、スーパーマーケットなどでの大量販売も行われるようになり、たくあんなどの漬物業は一気に成長した。冬でも凍ることの少ない気候と、伊吹山からの空っ風を利用した『干し大根』もさかんに作られ、たくあんの原料となっていました。

中国からの安価な塩蔵大根
 さらに大量販売が盛んになるにつれ、日本(地元)の大根では安売り競争には勝てないと、中国からの塩蔵野菜が利用されるようになる。国産のものの半額以下という原料価格に、一気に中国産の大根が使われるようになってゆきます。それにともなって、渥美では大根の生産が一気に落ち込んでゆくことになります。

食生活の変化が
 その後、冷蔵設備の発達で家庭でも食品の保存ができるようになると、塩度の高い味は好まれなくなっていきます。しかしながら、すでに業界では原価の安い中国製の塩蔵大根を使うことが常識となってしまっており、生の大根の素材を生かした薄塩のさっぱりたくあんを作るには、地元の大根ではコストが合わなくなってしまっていた。現在では、老舗の漬物会社の撤退が相次ぎ、地域の食文化も失われつつあります。
数百キロの重さにもなる重石
地面を掘り下げて作ったプールのようなタンクにぬか漬大根を漬け込んでいるところ。深さは2mを越す
 道長は漬物屋です。しかしながら、たくあん漬は作れません。その理由はまず次のような設備が必要だからです。広い工場にプールのように掘り下げた漬け込み用タンク。ホイストで吊り上げる数百Kgの重石など。さらに、大根を手早く漬け込み、保存、何度も漬けなおしをするなど、技術的にも追いつくものではありません。

 現在、たくあんを漬ける設備を持つ業者さんは、渥美半島では希少な存在となっています。さらに、食品添加物を使わず、さらに無農薬・無化学肥料で野菜の栽培もするという業者を、ぼくは渥美半島では、前川さんほかに知り得ません。

 たくあん漬も食文化です。そして渥美の『一丁漬』もまた、立派な食文化です。このすばらしい自然の味を、これからもずっと守ってゆけるよう、みなさまも応援してください。


お問い合わせ:
前川漬物株式会社
〒441−3605
愛知県田原市江比間町字三字郷中54
社 長:前川洋八
TEL:0531−37−0651