ソルトビー
ハニービーといえば蜜蜂。野に咲く花からせっせと一滴ずつの蜜(ハニー)を集めます。美しい海水を風と太陽で凝縮し、一粒ずつの塩(ソルト)にして集めます。だから『ソルトビー』といいます。
高知県幡多郡黒潮町に完全な天日塩を作っている企業組合『ソルトビー』があります。平成14年の立ち上げ以来、黒潮町ならではの天日塩を地域の特産にして、もっと黒潮町を活気ある町にしようとスタッフ一同努力を重ねてきました。そのために修学旅行の学生を受け入れ、塩づくりの体験教室もしている。なんと関東方面からも。

今も各地に残る塩浜、塩尻、塩釜、塩原などの地名がありますが、ここ黒潮町にも『塩浜』というところがあります。むかしは日本中に塩をつくるための塩田があったはず。海洋汚染が進む中、昨今ではあらゆる条件で製塩に向く立地を備えたところはめったにありません。その意味で黒潮町はその名も示すとおり塩の町にふさわしい。

生物が生きるのに欠かせない、また塩なくして考えられない食文化。そのたいせつさを広く人に知らせるのもソルトビーの仕事といえます。

日本で完全な天日塩を作るのはたいへんです。塩を作るのに適した乾季はといえば気温の低い冬。気温の高い5月〜9月にかけては雨季あり、湿度の高い夏あり、また台風などもありで、効率的な方法とはいえません。カンホアの塩(※)のように升目に仕切られた塩田に海水を引き込み、それらを順に巡らす間に結晶した塩を得るという(入浜式の一種)方法では、ほとんど雨の降らない乾季が必要です(日本では乾季にも雨が降る)。
揚水式
日本の風土にあった方法といえば、雨の対策と狭い土地での塩作りとして考えられた揚水式。方法としては海水を高いところから表面積が大きく通気のよいもの(ネットなど)に繰り返し散水し、水分を飛ばすことで濃い塩水(かん水)を作る。そのかん水の水分をさらに飛ばすのに天日をたよる温室か薪を焚く平釜を使うかして塩粒を得るわけです。

ソルトビーのある入江

結晶ハウス

揚水式の採かんタワー

温室での天日乾燥にこだわるのはなぜ
高知県黒潮町のソルトビーでは人工的な加熱をせず、ひたすら天日乾燥にこだわっています。道長でも漬物に使うのは天日塩に限っていますが、それにはこんな理由があります。その理由とは、加熱せずに作った天日塩は塩カドが少なく、漬物に使った場合、素材の風味を引き出す力が強いためです。

高価だけれど国産の天日塩を使いたいという思いから、ソルトビーさんの『海一粒』と出会って以来、一度はと考えていましたが、08/10/29、念願の見学をさせていただくことができました。道長のある愛知県豊川市からは600Km以上の道のりです。

黒潮町へは
倉敷から瀬戸中央自動車道で高松自動車道、高知自動車道と乗り継ぎ、その西の終点須崎市からさらに1時間以上で黒潮町到着。陸の孤島といっては申し訳ないけれど、それほどに海のきれいな町。2006年幡多郡の佐賀町と大方町が合併されて黒潮町が生まれました。実は日本一のカツオの漁獲高を誇る町でもあります。

そんな黒潮町(旧佐賀町)で平成14年、地域の活性化のため特産品をという話があり、そのときすでに大阪から移り住んで天日塩作りをしてみえた吉田かずみさん家族を含め4名のオーナーで立ち上げたのが企業組合ソルトビーです。

ソルトビー、製塩の工程
@海水を汲み上げ
A採かんタワーで循環。海水の約6倍の濃さになるまでタワー上部から散水を繰り返す
B結晶ハウスでかん水(濃縮された海水)をさらに蒸発させ結晶させる
C遠心分離機で天日塩とニガリを分ける
D異物除去のため選別作業
E『海一粒』できあがり。

という工程ですが、実際はこの工程の中には非常に細心の注意と作業が含まれています。たとえば雨が降りそうなときにはタワーを循環する海水を止め、タンクに回収しなければなりません。結晶ハウスでのかく拌作業で塩粒を均一にしますが、夏の作業はハウス内の温度が50℃にもなり大変です。できあがった塩の選別作業は一粒一粒を見極めるほどに細かい作業です。

またこれは些細なことのようですが、夏の塩と冬とでは微妙に味のちがいがあります。全国のソルトビーの顧客は一流の板前やシェフなど、味にきびしいプロもたくさんいます。また安心して使えるおいしい天日塩をという一般の消費者の期待も背負っていればこそ、微妙なところにまでこだわる姿勢が必要です。

地域の特産品をというきっかけが「おいしい天日塩ならソルトビー」という代名詞になりつつあるのかもしれません。またその所在地の町名がすばらしい。きれいな海の黒潮町。そこで生まれるソルトビーの天日塩。新しい町黒潮町が塩の町として発展していくことを祈ります。


お問合せ:
企業組合 ソルトビー
〒789-1716
高知県幡多郡黒潮町熊野浦90-4
TEL/FAX:0880-55-2040
http://salt-bee.net/