CPA試験概略 簿記って何?

なるべく専門用語は用いずに書きますので、専門家の皆様にとっては、誤りなど含まれているかと思いますが、ここはご容赦ください。

簿記の原理

 そもそも公認会計士っていうけど、会計とか簿記っていったい、何なのでしょう。

 簿記というのは、企業が行う経済活動を記録するためのルール、手段だと思うといいでしょう。もちろん企業でなく個人でも構いません。
 経済活動、というと難しいように思われるかもしれませんが、要は企業が行っていることすべてです。
 話を簡単にするために、非常に単純な例を考えてみます。私があなたから\10,000を借りたとします。このお金を借りるという行為を経済的に見るとこうなります。

 私 お金が\10,000増える あなた お金が\10,000減る

 それだけでしょうか? 借りたお金は当然返さなければなりません。だから増えるのはお金だけではありません。

 私 借金が\10,000増える あなた ツケが\10,000増える

 つまり、私があなたから\10,000を借りることによって、

 私 お金が\10,000増える あなた お金が\10,000減る
 私 借金が\10,000増える あなた ツケが\10,000増える

 という両面の経済効果が現れることになります。察しのいいあなたなら、もう気付いておられるかと思いますが、この両面の経済効果は、どんなときでも、すべての取引において出現することになります。
 企業なり個人なりが行った経済活動の結果を常に両面からとらえて記録する仕組みを、複式簿記といいます。先ほどの借金を簿記風に書いてみると、

 借方 現金 \10,000 | 貸方 借金 \10,000

 といった感じになります。すべての取引はこのように貸方と借方の両面で起こるので、当然、貸方と借方の総合計は常に同じになります。貸方や借方といった用語は今はどうでも構いません。右か左か、で十分です。

貸借対照表(Balance Sheets)

 さて、ではある経済活動によって生じた結果を左と右、借方(英語ではDebit)と貸方(Credit)に割りふる時に、どうやって判断するのでしょうか。

 ところで企業というものには実体がありません。○○株式会社には従業員がいます。土地やビルも持っています。でも、従業員は=会社、にはもちろんなりませんし、工場=会社、でもありません。実は会社というのは幻の存在なのです。(笑)
 これは冗談ですが、簿記会計的には、企業というものを下の図のように考えます。

資産

Assets

負債
Liabilities
資本
Equity

 資産とは、現金と売れば金になりそうなものすべてです。土地や工場、在庫商品、あるいはツケも資産です(将来お金を受け取れるはずですから)。負債とは借金です。資本というのは、会社の持ち主が出資した金額です。個人商店などでしたら、いわゆる元手がこれにあたりますし、株式会社なら株式を発行して調達した資金です。勘違いしておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、株式会社の持ち主は、株主であって社長ではありません。よく不祥事を起こした会社に関する記事などで、「会社を私物化した」などという言いまわしを見かけることがあるかと思いますが、経営者でなく株主が所有者だからこそ、このような言い方になるのです。
 もっとも数的には世間の会社の大部分を占める非公開会社(上場していない会社)においては、経営者=大株主=所有者である場合が殆どですが。というより、公開会社であっても、実はオーナー経営である会社がたくさんあります。

 さて、上の図の意味がおわかりでしょうか。この表は、企業が企業活動(例えば工場で製品を生産する)を行うための元手をどこから得ているのかを表しています。企業の持っている工場や商品を得るために借金をいくらし、いくら出資してもらった、ということを示します。察しのいい方は気付かれているかもしれませんが、この場合においても左と右は常に同額です。資産=負債+資本、という等式が常に成り立ちます。

 ある経済活動(取引)の結果が、資産を増加させる場合、それは借方に割り振られます。資産を減少させる場合は貸方です。同じく、負債と資本を増加させる取引は貸方で、減少させるときは借方となります。
 右が増えるのか、左が増えるのか、で今は十分です。

簿記から会計へ

 簿記の原理は以上です。要は右か左かどっちが増えるんだ、です。すべての取引はこの原理で記録されます。残念ながら世の中複雑なため、単純にお金を貸した借りた、ものを売った買っただけでなく、利子がついたり、ディスカウントしてもらったり、とさまざまなおまけがついてきます。株式会社は、株式を発行したり、リースで設備を調達したり、退職者に企業年金を支払ったり、他の会社を買収したりと様々な経済活動を行います。よって非常に複雑な取引も行われることになります。が、企業はそもそも何のためにこのような記録をつける必要があるのでしょうか。

 先ほどちらりと触れましたが、株式会社においては、株主が所有者であり、経営者(社長など)とは異なります。つまり、経営と所有が分離されている、これが株式会社の理念です。よって経営者は所有者(投資家、市場)に対して企業の状態を公正に開示(ディスクローズ)しなければなりません。もちろん、世の中には無数の会社があってそれぞれが異なる解釈で記録を開示していたのでは、比較のしようがありませんから、会計原則というものが定められており、それに従って企業の姿を開示する義務があります。つまり一つ一つの取引が簿記のルールによって借方貸方に分類され、その結果が財務諸表という形になって投資家(株主)に開示されるプロセスが財務会計です。財務諸表を作る(外部へのディスクロージャー)は、経営者の責任です。
 もちろん、このような情報は、投資家だけでなく、銀行などの債権者にとっても重要な意味を持ちます。倒産しそうな会社に好んでお金を貸す銀行はイマドキないでしょう。あるいは、資金繰りに行き詰まっている会社にツケでものを売る会社も無いでしょう。給料を払えそうにない会社に入社したい人もいません。極論すれば、全社会が個々の企業の公正な財務諸表を必要としています。

 一方、企業が報告をすべき相手はもう一つ存在します。それは税務署です。儲けが出ている限り企業は法人税を支払う義務があるため、こちらにも正確な企業の所得を報告する義務があります。
 が、企業の客観的な姿について公正に報告(開示)することを目的とする財務会計と、税金額がいくらかを計算する場合とはまったく目的が異なります。例えば租税は不景気だから減税しよう、といった政策の影響を受けますし、そもそも企業会計原則と税法とでは会社の儲けを計算する際のルールが一部違っています。ですから、税金に関する会計は税務会計として別物と考えます。

 会計には、管理会計というものもあります。これは財務会計や税務会計が外部への情報開示を目的に行われるのとは異なり、企業内部で用いられる会計です。たとえば、工場ごとの生産コストを計算する場合などに用いられます。

 簿記や会計というのは、企業活動を記す共通言語であり、特に経理に携わる方でなくとも、基本は押さえておく必要があります。

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