CPA試験概略 公認会計士の独占業務・監査

監査ってなに?

 さて、ここまで簿記や会計について簡単に触れてきましたが、ピンと来ない方もいらっしゃるでしょう。簿記だけなら簿記一級や二級といった検定試験もあるし、税金の計算なら税理士がいるじゃないか。その通りです。実は公認会計士でないと行えない業務があります。それは監査です。

 企業(の経営者)は、株主や債権者、さらに社会に対して正確に公正に企業の姿を開示する責任がある、と述べました。企業が倒産でもしてしまえば、株券など紙切れ同然です。本当は大赤字なのにそれを隠したりすることは許されません。しかし、企業が発表した財務諸表(どこそこ株式会社の決算が発表されました、といったニュースでおなじみのあれ)が正しいと信じることがなぜできるのでしょうか。それは、会計の専門家である公認会計士が、企業の開示した財務諸表が信頼できるかどうかをチェックしているからなのです。監査とはこのチェックのことです。つまり、財務諸表を作る責任は経営者にあり、公認会計士にはそれを監査する責任があります(「二重責任の原則」)。
 監査は簿記会計の専門家として国に認められた公認会計士によってしか行うことができません。

 現在、株式や債券などの資本市場(マーケット)が発展しているのは、公認会計士による監査が行われているからこそです。監査報告書は、会計の専門家である公認会計士が、財務諸表が企業の財政状態および経営成績を適正に表示している旨を宣言することで財務諸表に社会的信頼性を付与するものです。公正で質の高いディスクロージャー(とそれを支える会計)は、コーポレートガバナンスの根幹をなします。マーケットは資本主義のインフラであり、経済そのものです。
 上場企業は証券取引法で、また資本金5億円以上or負債200億円以上の大会社は、商法特例法で監査が義務付けられています。

 会計監査を行う公認会計士はプロフェッショナルであり、公益のために存在します。だから倒産した金融機関の監査を担当した監査法人や公認会計士が、元株主から不正な財務諸表を見ぬくことができなかった責任を問われていますし、日本においても会社の経営者と結託して不正な決算を認めていたとされ会計士が逮捕されています。りそなホールディングスへの公的資金注入の引き金を弾いたのは、監査法人でした。アメリカでは、破綻したエンロン、ワールドコムを担当していた会計事務所が非常に重大な責任を負わされました。

監査経験とキャリア構築

 会計監査業務を行うには簿記・会計の知識(あるいは監査そのものの方法論、スキル)のみならず、当然個々の会社の事業活動、すなわち購買・生産・販売等の業務やそれを支えるシステムについても理解が必要です。つまり、監査の経験を積む中で短い期間で企業の成り立ち、ビジネスの仕組みを理解できるとされ、これは他の職業と比べた場合のアドヴァンテージと見做されています。

日本でCPAは監査ができる?

 日本において企業の監査を(関与社員として)行うためには、日本の公認会計士資格が必要となります(勘違いされておられる方がいらっしゃるのですが、法律上は監査意見へのサイン以外は誰がやっても構いません)。ですから、監査を一生の仕事としたい方は、日本の公認会計士を受験すべきです。職務経験が浅いCPA合格者が大量採用された時期もありましたが、現在は監査法人は非常に狭き門になっているようです(他のバックグラウンドを持っている場合は異なります)。
 CPAに限らず公認会計士も同じですが、次のポジションに就くためのステップとして勤めておられる方も多いと思います(監査経験は他では積めません)。
 また、独立して(起業して、という意味ではありません)自分の城を、というのもCPA受験者にはあまりいないタイプだと思います。日本においてはCPAは(保持していないとその業務に就くことが認められない)いわゆる資格ではないからです。そういう目的なら、普通は日本の資格を取得されると思います。起業を考えられておられる方で、CPAを受験される方はいらっしゃいます。

 実際にCPA試験に合格し日本で働く方は、Big4と呼ばれる国際的な大会計事務所の各部門(日本の監査法人も含む)、国籍を問わず企業財務経理関係全般、金融業界、コンサルティング・ファーム(ここではSIベンダーも含む)などに従事されている方が多いようです。

 勘違いしている方はいらっしゃらないと思いますが、合格すれば安泰、などということは決してないということです。特にCPAはアメリカの資格です。日本の公認会計士資格と違ってCPA取得者は世界中にいます。世界中の優秀なCPAたちと切磋琢磨、競争していかなければならないのです。合格してはじめてスタートラインに立てるのです。もちろん、日本にいる限りは当然いわゆる独占資格などではありません。

資格を取る意味

 ただ、日本において公認会計士が現状、質的にまったく不足状態であることは確かです。金融技術に詳しい会計士、システム分野に明るい会計士となってくるとまったく心許ありません。単純に考えても母体数が少ないことが監査の質(投入できる時間と人材の量)に影響していると言うことはできるでしょう。もっとも監査の質は監査報酬の多寡により左右されそうですが。
 もしCPA合格者が増えることで日本の監査における問題点が少しでも解決するのならば、それでいいと思います。

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